中川修子が綴る「介護ブログ」

2, お誕生会

私どもの老人ホームやデイサービスではお誕生会の際に、手作りのタペストリーを飾ってお祝いをしています。

「ハッピーニューライフ東船橋のタペストリーを新しく作り変えてほしい』と社長から依頼を受け作成しました!

・めでたい“向かい鯛”です
・紅白の房は、花嫁さんの胸にさしている“守り刃”の房です
※貸衣装屋さんからいただきました
・裏地は鶴の模様の生地です

全て家にあった材料で作りました!紅白の房もこんなところで役に立つとはね!普通なら「何に使うの?」と捨てられてしまうところでした(私のSDGSです)。

ところで、誕生会と言えば以前悲しい⁉と言うか、「私達が良かれと思ってしている事が、全ての人において喜ばれる訳では無い」と言うことを気付かされた出来事がありました。

誕生日の際には、当然のように誕生会を開催し、レストラン並みの美味しい料理を用意しています。スタッフ全員からのメッセージを貼った色紙もプレゼントしており、皆さんとても喜んでくれて、「あとでゆっくり見させてもらうわね!」と抱きかかえてお部屋に戻られる方がほとんどです。

ところがある日、他の方の誕生会を機嫌の悪い様子で「このハッピーバースデーの曲いつまで流しているの!」と言われた方がいらっしゃいました。この時はスタッフがすぐに「ごめんなさいね」と曲を止めに行きました。

この方は、もちろんご自身の誕生会もしてほしくない!とのご要望だったので誕生会は中止しました。色紙も「いらない」と拒否されましたが、私が「せっかくヘルパーさんたちが作ってくれたのだからメッセージだけでも読んでみませんか?」と伝えると、「じゃあ、そうする」と言ってお部屋に色紙を持っていかれました。

次の日、スタッフから「〇〇さんの部屋のゴミを捨てようとしたら、色紙がハサミでズタズタに切られて捨てられていました…」との報告が。。。

最初は、「えー!」と思いましたが、入居者の方の中には、年を重ねることを複雑な想いで迎えている人もいることに気づかされました。

私たちは、元気で年を重ねられたことに喜びを感じていると思い、誕生会を精一杯思い出に残るよう頑張ってきましたが、みんながみんなそう思ってはいなかったのです。

「年なんてとりたくない!」
「いつまでも若々しくいたい!」

という叫びが裏側にあったのです。

スタッフにも「お誕生会を楽しんでくれる人ばかりではない。嫌な人もいるんだってことを教えてもらったね!」とその方を否定することはしませんでした。

その方は、その老人ホームの中でも一番お元気で、お掃除も手伝ってくださいます。ご本人の希望で「韓国語を習いたい!」とおっしゃっていたので、私の友人の韓国の方を招き、『韓国語教室』を老人ホーム内で開いたのですが、その上達ぶりには驚くばかりでした!

決して私たちスタッフと仲が悪いわけではないのですが、お誕生会だけはどうしても受け入れてもらえませんでした。

お誕生会は「生まれて初めてだよ!」とほとんどの方が喜んでくださいます。ただし、そうではない方も中にはいらっしゃるということに気づかされたことを「お誕生会」という言葉を目にする度に思い出します。